Welcome to Humming Pro.

音cafeを卒業する日がこんなに早く来るとは思ってもみませんでした。もっと早く出会いたかったと、今強く思っています。

NHKドラマ『この声をきみに』を見て飛び込んだ朗読教室、あの頃の私は何か満たされていなかった気がします。家庭にも仕事にも恵まれて贅沢な話ですが、私はこのまま平凡に歳を重ねていくのだろうか、そう考えたとき、夢に満ち溢れた大学時代を思い出すのでした。

目の不自由な方への音訳ボランティアをやっていた頃。内気で人と話せず、本ばかり読んでいた子ども時代、国語の本の音読だけが私の声での自己表現でした。大学に入った時も、キラキラした世界にすぐには飛び込めなかった私が出会ったのが音訳でした。私が読んだ声のテープを喜んでくれるのが嬉しくて夢中で読みました。

結婚してからは家事と子育てと仕事に追われる日々、それなりに充実してはいますが、もう一度何かに夢中になってみたい、私にはこれ、と胸を張って言えるものが欲しいとずっと思っていました。

音cafe教室で千代先生や、たくさんの朗読仲間の皆さまと出会い、私はあの時思い切って飛び込んで良かったと心から思っています。

朗読が楽しくて仕方ないのです。

この時このセリフはこんな気持ちで言ったんだろうと想像しながら、声を出す。色んな声優さんの声を聞いて研究したり、物語を深く考察したり、アクセント辞典を引きながら久々に学生時代の勉強気分になったり、何度も練習して着地点を見つける。先生にアドバイスしていただいたのをメモしてまた練習する。他の方の朗読にときめいて、あんな声で読みたいなぁと憧れる。まるで少女のように夢中になれるのです。何より同じ趣味の仲間を見つけたのが本当に嬉しいです。

どこで読むよりなぜか音cafeで読む時が一番スイッチが入っていい感じに読めるのも、音cafeマジックなのでしょうか。とてもいい雰囲気で大好きな場所なので、なくなるのは寂しいですが、私たちにたくさんの思い出を残してくれたこと、感謝しています。

音cafe最後の朗読には『デューク』を選びました。

私は昨年愛犬を亡くし、この作品を読むたびに涙が止まらず、自分には読めないと思っていたものです。けれども、朗読は自分の人生が、経験がすべて声になって出てくるもの。私はこの主人公の気持ちが痛いほどわかるではないか。そう思い、自分を超えるためあえて挑戦した作品です。それを音cafe卒業式でやろうと決意しました。

音cafeは卒業しましたが、私はまた新しい朗読の日々の始まりだと思っているからです。

これからも様々な作品に挑戦したいと思っています。

千代先生、皆さま、本当にありがとうございました。

これからも、よろしくお願いします。